岩手県二戸市の中心部にある九戸城跡は九戸光政が築いたものとされ,豊臣秀吉天下統一の最後の合戦場となり,昭和10年に国の史跡指定を受けました.平成元年度(1989)から開始された九戸城の環境整備事業により,本丸整地層の断面には焼土や木炭,焼かれた生活遺物や火縄銃弾丸など戦禍の痕跡が見られており,さらにその下位に地上では観察できない堀跡や溝跡などの九戸城時代の遺構が残っていることが明らかになりました.本市は,この九戸城跡を貴重な観光資源と位置づけ,埋蔵文化財センターの整備やボランティアガイドの育成,平成26年〜27年には市民文士劇「天を衝く」を上演するなどの取り組みを行ってきました.平成28年度には,地域共同研究の一環として,二戸市と岩手県立大学ソフトウェア情報学部がバーチャルリアリティ(VR)による九戸城跡の再現を試みており,九戸城当時の地形(段差,傾斜,標高差など)や歴史専門家によって推測された建物の位置・向きなどを記録し,VR内で忠実に当時の風景を再現するための材料を整備してきています.平成28年8月には,九戸城エントランス広場がオープンし,さらなる誘客を図っている.平成29年4月6日に,九戸城は「続日本100名城」として選ばれています.
VRによる九戸城とその周辺環境の再現は,文化財のディジタルアーカイブとして大きな意義がある.歴史的建造物を次世代に語り継ぐという目的だけでなく,二戸市への観光客誘致に大きく貢献できます.将来,ディジタル産業への発展を促進することで,市が進めている九戸城跡周辺地域の公民連携による地方創生に寄与することが期待されます.
地域共同研究の一環として,二戸市と岩手県立大学ソフトウェア情報学部がバーチャルリアリティ(VR)による九戸城跡の再現を試みました.研究は2回の現地視察・調査から始まり,九戸城当時の地形(段差,傾斜,標高差など)や歴史専門家によって推測された建物の位置・向きなどを記録し,VR内で忠実に当時の風景を再現するための材料を収集しました.
九戸城の設計図がなく,歴史専門家の見解や史料を参考にしながら,VRを作成する必要がありました.これらの情報を忠実に再現することは大変困難なものであり,VRコンテンツを作成する段階で成果発表会を行い,一般のVR体験者と専門家の意見を収集しながら,地形の起伏(高低差)や植物,土の色などの多方面でのコンテンツの改善を試みました.
九戸城には,天守が確認されていないが,板葺きの櫓が存在すると考えられています.本丸の門と橋において,その礎石が残っているため,同年代の史跡を参考にしながら,本丸と二ノ丸を中心にモデリング作業行います.本プロジェクトで再現する建造物には,本丸や門,橋,小屋,馬小屋,井戸などがあります.
合戦後の整地によって,当時の九戸城の地形と現在とは異なっている部分があります.また,土塁のあった箇所がなくなったことから,これらの復元が必要になります.ここで,過去と現在の様子をそれぞれ360°画像による情景画像で表現し,その変化の様子を比較できるようにしました(風景は3秒で切り替わります).
岩手県立大学ソフトウェア情報学部では,夏休みのゼミ合宿を通じてコンテンツ制作のトレーニングを実施し,多くのディジタルコンテンツ制作の人材を育成してきている.合宿は二泊三日に渡って実施していますが,実施場所はその年度ごとに変わるため,岩手県の様々な地域特徴を知るきっかけにもなります.
【問い合わせ先】
二戸教育委員会文化財
〒028-6101 岩手県二戸市福岡字八幡下11-1
電話:0195-23-8020,FAX:0195-23-8044